【決算チェック】万年筆屋さんの財務諸表 セーラー万年筆 2018年12月期

3月決算の会社の決算発表が本格化していますが、以前にも書いた通りXBRLの提出は株主総会後になるため来月後半ぐらいからになります。タイムリーな記事を書きたいところですが仕方ありません。そこで、昨年12月決算の会社の一覧を眺めていたら、セーラー万年筆がふと目に留まりました。そう言えば、前回万年筆を握ったのはいつだろう。20年程前、祖父が亡くなる数週間前ぐらいだっと思いますが、入院中の祖父が孫全員にモンブランの万年筆をプレゼントしてくれました。私の万年筆は、その中から祖父が試し書きに使った1本だったこともあり、今も抽斗に大事にしまってはいるのですが、この20年使った覚えがありません。

前職は、経理部員でしたが、総務・経理で万年筆を使って仕事をしていた人は記憶にありません。万年筆の需要が尽きることはないと思いますが、少なくとも国内で今後増えることもなさそうな気がします。財務諸表をチャートにして直近の推移を見てみましょう。まずは、基本3諸表から。

セーラー万年筆 財務諸表推移 2018年12月期

損益計算書では年々売上高が減少していて直近は営業赤字です。その割に貸借対照表では純資産が増えています。また、製造業としては、固定資産の割合が小さい印象です。キャッシュ・フローを見ると、営業キャッシュ・フローはずっとマイナスで、フリーキャッシュ・フローもマイナスが続いています。そんな中、昨年の財務キャッシュ・フローが際立っています。同社のIRを見ると、昨年5月に約6億円の第三者割当増資を行なっているようです。貸借対照表の純資産が、昨年大きく伸びているのはそのためです。

ところで、セーラー万年筆は、社名は万年筆でも現在の主力事業もそうなのだろうかと気になりました。昨年の決算短信を見たところ、セグメント別では万年筆を主力とする文具関連の売上が約36億円、ロボット関連が約16億円となっていて、万年筆が主力事業であることには変わりないようです。次は、各段階利益です。

セーラー万年筆 各段階利益推移 2018年12月期

粗利は27%前後、営業利益率は1%以下と低めで推移しており、昨年は営業赤字でした。直近4期で最終黒字たったのは、2017年12月期だけです。売上も年々落ちていますし、苦しい状況が続いているようです。次は、流動比率。

セーラー万年筆 流動比率推移 2018年12月期

流動比率は、昨年の増資による資金調達も効いているのか、直近で2倍と安定的です。現預金、売掛金までで流動負債を上回っており、当座比率でも1倍を超えています。

次は、棚卸資産の回転速度を日数で見たチャートです。

セーラー万年筆 棚卸資産回転日数推移 2018年12月期

売上高は減少気味で、在庫の回転速度も年々落ちているのがわかります。やはり万年筆の需要が落ちているのだろうと推測したのですがそうでもないようです。同社の決算短信を読むと、新3カ年計画で「国内外の需要に対する供給不足の状況が続いている万年筆の増産に注力し、売上高の拡大を目指します。」とありました。先のチャートを見た感じでは供給不足の状況は感じられませんが、業界としては需要が伸びていて、その需要を同社が十分取り込めていないということかも知れません。

このブログを書いていて思い出したのですが、以前歳の離れた従姉妹の就職祝いにノック式の万年筆を送ったことがありました。若い人が万年筆を使う機会もあまりないかとは思ったのですが、ノック式なら気軽に使えるかと。実際、万年筆はちょっと値も張る感じがして、就職祝いとかの贈答品としては便利なところもあります。

死の床にあった祖父は、どんな思いで万年筆を送ってくれたのだろう。あの日の情景を思い出しました。インクを入れたらまだ書けるだろうか。

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