【決算チェック】スルガ銀行 2019年3月期

昨年来様々な問題でニュースとなったスルガ銀行ですが、昨日26日、大荒れの株主総会を経て2019年3月期のXBRLが登録されました。スルガ銀行については、第3四半期時点でも記事にしましたが、本決算時点の決算書も可視化してみます。まずは、基本3諸表の推移です。

スルガ銀行 財務基本3表推移 2019年3月期

超低金利で苦境の銀行業界にあっても高い利益率で好調だったスルガ銀行の業績は、2018年から経常利益が激減、2019年3月期で経常赤字に転落してしまいました。中段のPLチャートでは、経常損益が左側(借方)にある場合は利益、右側(貸方)にある場合は損失を表します。BSでは、総資産が急減していますが、主な原因は預金の流出。銀行にとって預金は負債ですが、その推移をチャートにしてみます。

スルガ銀行 負債推移 2019年3月期

負債の部では、預金の占める割合が大きく、他の項目は合わせても線程しかありません。預金額は、前年度から9,200億円程減っています。先に示したPLではその背丈が急伸しているので一見増収に見えますが、増えているのは費用で収益は減っています。では、費用で急激に増えたものは何か。こちらもチャートにしてみます。

スルガ銀行 その他経常費用推移 2019年3月期

経常費用の中で急激に増えたのは、「その他経常費用」に含まれている「貸倒引当繰入額」。その額、1,340億円と巨額で、この引当金だけで経常収益1,400億円をほぼ吹き飛ばしています。利益についてもその推移をチャートにしてみます。

スルガ銀行 各段階利益推移 2019年3月期

巨額の貸倒引当金を積んだことで、直近3月期は大幅な経常損失となっています。もともと40%前後の経常利益率というのは銀行業界ではかなり高めの方で、例えばメガバンクで20%〜30%ぐらいです。高利益率の背景には無理筋な話も含まれていたということでしょう。

こうして見ると、銀行は大事なお金を預かってもらう会社だけあってやはり信用あってこそ。一連の問題で前年度の22%に当たる9,200億円もの預金が流出しています。赤字の原因になった貸倒引当金自体は、キャッシュの流出を伴わない費用なので、営業キャッシュ・フロー上はプラスに働きますが、この預金の流出の前では無力です。ちなみに、預金は銀行にとっては負債ですが、その増減は営業キャッシュ・フローに含まれます。

ただ、貸倒引当金については、今回の決算の引当が十分な額に達しているなら、とりあえずここで一段落のはずで、今期はここまでの損失になる積み増しはないものと思われます。もちろん、信用の失墜で経常収益自体が大幅減になる可能性もありますし、景気の行方によっては引当の増額もあるかも知れず、今期黒字転換するかについては予断を許しません。預金の流出も止まるかどうか。

スルガ銀行については、パワハラなどでもニュースになりました。今決算期は、いろんな意味で刷新、再構築の年になるのでしょう。この5月には新生銀行との提携も発表されていますが、今後も何かあれば四半期決算のXBRLでも取り上げてみたいと思います。

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