【決算チェック】出版取次の財務諸表 日本出版販売、トーハン 2019年3月期

出版関連では、このブログでも文教堂の債務超過を取り上げたことがありますが、先週その文教堂が事業再生ADRを申請しました。今期決算となる8月までに債務超過を解消しなければ上場廃止となるところでしたが、今回の申請で上場維持の可能性も出てきました。今回は、同じ出版業界の中で出版社と本屋さんの間に入って本を流通させている取次業者を取り上げてみたいと思います。取次大手と言えば、日販(日本出版販売)とトーハンがありますが、そのXBRLを可視化し、出版業界の状況を概観してみます。ちなみに、日販もトーハンも非上場会社なので株情報サイトなどでも見ることはありませんが、XBRLはEDINETで公開されています。まずは、貸借対照表から。

出版取次大手2社の貸借対照表推移 2019年3月期

総資産が微減という程度で、BSにはほとんど変化が見られません。文教堂の苦境を見ているので、出版取次も年々事業が縮少し純資産が毀損しているイメージだったのですが意外に堅調です。では、営業損益はどうかと言うと、

出版取次大手2社の営業損益推移 2019年3月期

BSには変動がなかったのですが、PLは右肩下がり。この4年で両社とも15%程落ちています。急激でなないとしても、じわじわ細っている感じです。営業損益では、黒字は維持しているようです。さらに進んで、各段階利益を見てみます。

出版取次大手2社の各段階利益推移 2019年3月期

売上総利益率(粗利率)は、若干改善しているようですが、営業利益率は両社とも少しずつ落ちています。営業利益以降の利益は、売上に対して非常に小さいためにチャートにすると線になって判別できませんが、直近3月期の最終損益は、日販が2億3千万円の赤字、トーハンが5億3千万円の黒字でした。最後に、棚卸資産回転日数です。

出版取次大手2社の棚卸資産回転日数推移 2019年3月期

出版業界は、在庫といっても納返品が可能で、一般的な在庫と同様に見て良いのか微妙なところもありますが、売上が減少傾向にある中で回転日数は伸びているようです。

両社の現状を見ると、業績的には損益ギリギリのところで推移していて、まだBSが大きく揺らぐ状況ではなさそうです。とは言っても、売上の減少がこのまま続けばいずれBSにも変化が現れて来ることになるでしょう。

私は、前職で出版部門を持つ会社で経理をやっていたのですが、1年程出版を担当したことがあり、その時は日販、トーハンを含め10社ほどの取次会社から来る納返品データを毎日処理していました。その会社でも出版部門は年々縮小していたので、私が担当していた頃は、往時と比べれば出版物も少なかったのですが、それでも結構面倒な仕事でした。

出版業界の縮小傾向はいつになったら止まるのか。答えがあるのかわかりませんが、出版物はある意味国力を表しているような気がします。電子書籍への流れもありますが、町の本屋さんが根こそぎなくなるような時代にはなって欲しくないものです。

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