【勘定科目Tips】日ハムのIFRS財務諸表に大谷選手の痕跡を見た。

前回の記事でお伝えしたように、この2019年3月期から日本会計基準(JP-GAAP)の会社に加えて、IFRS適用会社の連結財務諸表もXBRLで金融庁のEDINETに登録されるようになりました。正確にはこれまでもXBRLで提出されてはいたのですが、殻だけXBRLで中身はHTMLだったのでした。この3月決算でIFRSのXBRLを提出した企業は120社程度で、開発中のチャートシステムで昨日全量チェックをしていたところ、珍しい勘定科目を見つけたので紹介します。以下は、日本ハムの連結財務3書評の直近2年の推移をチャートにしたものです。

日本ハム 連結財務諸表推移 2019年3月期

二つ目のチャートの項目に「プロ野球選手移籍金」とあります。2018年3月決算に現れたこの勘定科目の金額は、22億7300万円。もちろんこれは大谷選手のエンジェルス移籍金です。割り振られた勘定科目コードは、以下。

jpcrp030000-asr_E00334-000_GainFromTheTransferThroughThePostingSystemIFRS

具体的で生々しいコードです。IFRSのXBRLとしては、この3月に提出されたものが初めてとなるので、この勘定科目は、公開されたものとしては会計史上初めて大谷選手に使われたものとなります。大谷選手にまた一つ快挙が。ちょっと大袈裟か? 科目コードに含まれる「E00334」は、金融庁のEDINETで日ハムに割り振られた会社コードで、この勘定科目は、日ハムが定義した独自コードになります。科目の末尾には、国際会計基準「IFRS」の勘定であることが明示されています。

チャート上では、PLの2018年3月期の右側のスタックチャートの上にちょこんと乗っているのですが、軽く1兆円を超える日本ハムの総収益の中では、22億円といえど線状に潰れてしまって、見た目の判別はできませんので念のため。

今回初めて【勘定科目Tips】として記事を上げたのですが、今後も変わった勘定科目が見つかったら、こんな感じの軽めの記事で綴っていきたいと思います。

ところで話は変わりますが、今回IFRSのXBRL登録会社約120社のデータを全量検査してみたのですが、このチャートシステムでXBRLに不都合な内容が見つかったのは2社でした。社名は伏せますが、1件目は連結キャッシュ・フロー計算書の計算リンクベース(Calculation LinkBase)で、「現金及び現金同等物の増減額」の計算が未定義なもの。キャッシュ・フローの計算リンクベースで最終地点の科目が定義されていないなんてありえない。2件目は、費用関係の勘定科目の値にマイナス値が登録されているもの。利益は、収益から費用を引いて計算されるので、値もマイナスで入れるものと勘違いされたのでしょう。計算リンクベースでは、各勘定科目が下位の科目からどのように計算されるのか定義していますが、引算は各勘定科目に設定されたweightパラメタ(引算の場合は、-1)を掛けて計算します。元のデータが負の値で入っていると、符号が相殺されて、利益=収益+費用なんてことになり爆益が実現します。この会社のXBRLでは、非連結決算部分は正の値で正しく入っていたのですが、連結のIFRS部分だけ負の値で設定されていました。もちろん、この会社の各種費用が何かの戻りで実際マイナスだったなんてことはありません、念のため。

XBRLは、経理部員がテキストエディタでタグを入れながら編集して作るようなものではないので、何らかのシステムを使用しているものと思われます。XBRL関連で出回っているソフトは数が限られると思いますが、この程度の整合性チェックもしていないとは驚きです。企業の会計データを扱っていながらちょっとひどい。

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