XBRLからのチャートアプリケーションの開発も終着点に近づいています。今秋中にもリリースしたいところですが、公開前に色々と悩み事があります。その一つが損益(PL)の表示をどうするかです。これまで、損益計算書は基本は営業利益を表示し、営業利益がXBRLの構造にない会社については経常利益で表示する仕組みにしていました。日本会計基準であれば、営業利益、経常利益のいずれかが必ず含まれていたのでこれで事足りていたのですが、この3月決算から公開が始まったIFRSのデータを処理していたところ、会社によって損益の表示がバラバラであることがわかりました。もともと、IFRSについては経常利益の概念がないので、利益としては「売上総利益」、「営業損益」、「税引前損益」、「税引後損益」の4つになりますが、この4つが揃っている会社もあれば、売上総利益から2つ跳んで税引前利益になったり、税引前利益以降しかなかったりと全く揃っていません。
とりあえず今回のシステムではどうするか悩んだのですが、結局全ての損益を表示できるようにして判断を利用者に委ねることにしました。サンプルとしてカカクコムの連結損益計算書を描いてみました。カカクコムは、2年前の決算まで日本会計基準で、その後IFRSを採用しています。
IFRSを採用したところから売上総利益が無くなってしまいました。IFRSであっても売上総利益を開示している会社もあるので、カカクコムの事情かも知れません。データの無い年度については、(NA)を表示することにしました。次は営業損益。
日本会計基準の営業利益とIFRSの営業利益を同じチャートに並べてよいものかという指摘も受けそうですが、複数の会計基準を含む場合は、年度別に基準を明示することで注意喚起をしているつもりです。科目もIFRSとそうでないものを区別しているので冗長な表示になっています。次は経常損益、ケイツネです。
当然ですが、IFRSを採用したところで、経常損益は無くなります。次は、税引前損益。
税引前損益から次の税引後損益がない会社はありません。次は、税引後の最終損益。
ここまで来ると、日本会計基準とIFRSの科目一覧が多すぎてわけがわからなくなりそうです。どの損益についても、異なる会計基準のデータを一つのチャートに並べるのは誤解を招く可能性もありますし、問題がないわけではありません。ただ、大手の情報サイトなどがそのような明示のないままに売上や利益のチャートを平気で描いていることを考えれば、それなりの気配りをしているつもりです。
ユーザインターフェイスとしては、どの段階の損益計算書でもボタン一つで切り替えらえるようにしています。チャート上の各科目のブロックをクリックすれば個別の科目詳細も出てくるようにしているので、会計基準によって含まれているものに違いがあればそれも確認できます。
ところでIFRSについては、EUでその基準作成に大きな役割を果たしてきたイギリスがブレグジットすると、いきなりハシゴを外されてしまうのではないかという話を読んだことがあります(「会計グローバリズムの崩壊」田中弘著)。ジョンソン首相の「合意なきブレグジット」ありきの計画も当面破綻したようなので今後どうなるのかわかりませんが、ファーストリテイリングや通信大手など先進的な企業が採用しているからうちでもと考えている会計担当者の方がいたら、一度読んで見られるのもよいかと。
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