【コラム】XBRLの困ったところ(1)不完全な勘定科目定義

XBRLを使ってチャートを描くシステムを公開して二週間。開発は次のフェーズに入っていくのですが、ここまでの開発で気づいたことを備忘録も兼ねて書いておきたいと思います。今回は困ったことの一つ。勘定科目の不完全な定義です。

XBRLで使用される科目は、基本は会計上の勘定科目であって定義上は必ず「借方、貸方」、「ストック、 フロー」という属性を持ちます。簿記を知らない方には意味不明かと思いますが、例えば以下のような仕訳があったとします。

 現金(100万円)    借入金(100万円)

この仕訳が100万円を借りた話なのか、100万円を返済した話なのかを判別できるのは、各科目に借方、貸方の属性があるからです(借金の仕訳を例にしたので誤解を招きそうですが、”借方”、”貸方”という呼称に直接的な意味はありません)。ちなみにこの仕訳の意味は前者です。更にこれら仕訳の集合体である帳簿を貸借対照表、損益計算書として集計できるのは、各科目に「ストック、フロー」の属性があるからです。これらの属性を抜きにした勘定科目はありえません。

XBRLでは勘定科目はタクソノミで定義されています。「借方、貸方」は属性名「balance」で値は”debit”、”credit”が指定され、「ストック、フロー」は属性名「periodType」で値は、”instant”、”duration”が指定されます。このサイトで公開しているチャートシステムでは、各企業が提出した科目の一覧及びその属性も表示していますので、ご興味のある方は参照してみてください(ただし、科目には従業員数や各種経営指標など勘定科目以外も含まれているので、全てにこのような属性があるわけではありません)。

標準的な勘定科目は、EDINETでは金融庁が、EDGARでは米証券取引委員会(SEC)が作成して公開していますが、さすがにこの段階ではこうした定義上の抜けはありません。問題なのは各企業が必要に応じて追加している勘定科目です。

XBRLのXは、eXtensibleで拡張性を意味しますが、財務諸表を作成する企業は必要に応じて独自の勘定科目を追加するなど拡張することができます。例えば、以下はソフトバンクグループが追加したビジョンファンド関連の科目です。

jpcrp030000-asr_E02778-000_OperatingIncomeFromSoftBankVisionFundAndDeltaFundIFRS

EDINETでは、企業が追加した科目には、Eと5桁の数字で設定された企業コードが含まれます。E02778はソフトバンクグループの企業コードです。ちなみにこの長い科目コードは、「ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびデルタ・ファンドからの営業利益」で、属性は「balance=credit」、「periodType=duration」として定義されています。ある意味企業会計を知り尽くした孫さんの会社だけあってこのレベルの抜けはありません。

しかし企業によってはbalanceが指定されていなかったり、periodTypeがなかったりと、いい加減な定義で勘定科目を追加している会社もあります。XBRLは経理部員が手作りでXMLを書いているはずもなく、XBRLに展開するソフトを使っているかと思われますが、出回っているソフトの品質がよくないのか最低限のチェックもしていないようです。

このように不完全な定義の勘定科目を含むXBRLは、貸借対照表や損益計算書といった人間が見るための帳票レイアウトに展開するだけなら顕在化しませんが、数値として分析等に使う際には支障があります。わざわざXBRLのような複雑な規格をもって企業財務情報をデータベース化する意義は、計算機による分析にこそあると思っているのでとても残念です。チェック自体はとても簡単にできますし、水際でチェックするなど当局には何かしらの対応をお願いしたいものです。

今回は勘定科目の不完全な定義を取り上げました。しかし、私がXBRLからチャートシステムを作るにあたって更に困ったのは、不完全なリンクベース定義です。次回はリンクベースについて書いてみたいと思います。

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