【財務分析】良い債務超過? 米マクドナルド

Amazon Primeでマクドナルドの創業者、レイ・クロックを描いた映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(The Founder)が公開されていました。レイ・クロックについては以前に自伝を読んだことがあったので内容的には知っていたのですが、映像で見るのはまた格別。この映画の見所の一つは、後にCEOとなるハリー・J・ソネンボーンとの出会い。資金繰りに行き詰まっていたレイの事務所を訪れたハリーは、帳簿に一通り目を通して深いため息を一つ。そして「何の業界にいると?」とレイに問う。そして「バーガーじゃなく….、不動産業界です」とこのビジネスの本質を説き始める。無茶苦茶かっこいい。

映画を見終わったあと、気になって米SECのリポジトリEDGARからマクドナルドのXBRLを取り寄せ可視化してみました。12月決算なので、直近は1年前の2018年12月です。このXBRLチャートシステムは、日本の金融庁のXBRLと同様に米SECのXBRLも扱えるようになっています。クローリングからXBRLの解析、可視化まで20秒ほど。目の前に現れた財務チャートを見て驚きました。債務超過だったのです。しかも3期前から。あれ?

米マクドナルドの貸借対照表推移(2018年12月期)

XBRLの解析に異常があったのではと疑ったのですが、どう見ても債務超過。世界のマクドナルドが債務超過とは、さぞニュースになっただろうとググってみたのですが、ネガティブなニュースには特に見当たらず。では本業の損益はどうなのか?

米マクドナルドの損益計算書推移(2018年12月期)

売上はこの4年で18%も減ってはいますが利益は伸びていて減収増益。特に直近の利益率28%はすごい。日本の外食産業で利益率が10%を超える企業なんて見たことないような? 思いつくところで和のファーストフード代表、牛丼の「吉野家」は0.05%、カレーの「壱番屋」は5.45%、「かつや」のアークランドは8.47%。そして日本マクドナルドは7.95%と全く太刀打ちできません。高い利益率で連続黒字を出しているのになぜ債務超過に? キャッシュの流れを追ってみましょう。

米マクドナルドのキャッシュフロー推移(2018年12月期)

営業キャッシュフローは60億ドル前後で安定して推移していますが、何やら財務活動でお金が継続して出て行っています。負債の返済なら債務超過になるはずもなく、キャッシュは何処へ流出しているのか? 財務活動によるキャッシュフローの明細を見てみます。

米マクドナルドの財務活動によるキャッシュフロー推移(2018年12月期)

なんと営業キャッシュフローを超える金額が自社株買いと配当で出て行っています(上記チャートのマイナス側)。こうなると投資活動等に回すキャッシュは足りなくなるわけで、そこは新たな借入で調達しています(上記チャートのプラス側)。純資産は減り、負債は増える式。

日本で債務超過と言えば、赤字続きのために純資産が毀損し、借金は増え、ついには資金ショートに至る悪いイメージ。東証の上場基準でも、債務超過に陥った会社は、1年の猶予期間内に解消できなければ上場廃止になります。しかし米マクドナルドの場合は、潤沢且つ安定した営業キャッシュフローを前提とした戦略的なもので、債務超過に陥ったというより意図的にそうしたということ、根本的に別物のようです。何より株主に優しい。

こうして見ると、債務超過というのは単に資産より負債が大きいというだけのことであって、その負債をコントロールできる安定したキャッシュフローがあるなら、債務超過であること自体はなんら問題ないということか。配当より安い金利で資金調達できる状況なら尚更。自分の中では債務超過の悪いイメージだけが先行していたようです。

米マクドナルドの債務超過についてググってみると、いろんな方が財務分析の記事を出されているようで、「投資対象として素晴らしい」、「良い債務超過」、「株主重視」など好評価のようです。ひたすら内部留保を溜め込んでいるどこぞの国の企業には見習って欲しいもの。

とは言え、昨年夏頃まで中小企業の経理部員として、毎月末の資金繰りにも気を配るような日々を過ごしていた私としては、せっかく稼いだキャッシュをほぼそのまま吐き出し、その上負債を増やしてまで自社株買いや配当を行うというのはにわかには受け入れ難いものがあります。多少は内部留保したらとか、せめて投資CFを控除したフリーCF以下でやるべきではと思ってしまいます。いくら安定的なキャッシュフローがあると言ってもいろいろリスクはあるわけですし。

米マクドナルドの財務諸表は、創業者の映画にもまして刺激的なものでした。米国にはマクドナルド以外にもこうした企業があるようです。時間があれば今後そうした企業の財務諸表も取り上げてみたいと思います。ともあれ私自身がこの財務諸表を「良い債務超過」と受け入れるためには、まだまだ修行が必要のようです。全くの不勉強でした。

なお、この記事で取り上げた米マクドナルドの財務諸表チャートは、こちらで見ることができます。インタラクティブチャートなので、チャート内の勘定科目をクリック(スマホならタップ)すれば、先に掲載した財務活動によるキャッシュフロー明細のように、各勘定科目の下位構造をチャートとして見ることができます。更に明細チャート上の科目から下位の明細に。下位構造がある限りどこまでも表示されます。ご興味があればご自分で財務分析してみてください。

また、上述した米マクドナルド及び日本の外食関連企業の財務チャート比較画面は、ここをクリック(タップ)して参照してください

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