【財務分析】バイオベンチャーの財務諸表 サンバイオ他

昨日(2019/12/16)からバイオベンチャーのサンバイオがストップ安をつけています。第日本住友製薬との提携解消のニュースを受けてのことですが、一つのニュースでストップ高やストップ安はバイオベンチャーではいつものこと。一攫千金も夢ではない代わりに一瞬で資産を失うリスクも。サンバイオは年初にも5日連続ストップ安をつけて注目を浴び、その後は回復基調だったのですが、年末を前にしての悪材料再び。

サンバイオもそうですが、まだ利益の出ていないバイオベンチャーの財務諸表はとても独特で興味深いので取り上げてみます。以下はサンバイオ、アンジェス、ナノキャリア、シンバイオの損益計算書の推移をチャートにしたものです。

バイオベンチャー4社の損益計算書推移
バイオ系4社の損益計算書推移

直近の決算と言っても決算月の都合上ほぼ1年前になりますのでご注意下さい。また、損益計算書の可視化では、損益(黄色)は、右側(貸方)に表示される場合は、売上より費用が大きいことを意味するので損失、逆に左側(貸方)にある場合は利益になります。チャートでは見たまま大幅赤字が続いています。こんなに赤字が続いたらBSはボロボロなのかというとそうでもなさそうです。

バイオベンチャー4社の貸借対照表推移
バイオ系4社の貸借対照表推移

赤字が続いている割には純資産比率は高め。資産の大部分は流動資産で、しかもその多くを占めているのは現預金です。普通の会社と違って総資産が激しく変動ししているのも特徴。「流動資産の現預金を研究で費やし、足りなくなったら資金調達」を繰り返しているためです。その様子は、キャッシュフロー計算書にもよく表れています。

バイオベンチャー4社のキャッシュフロー推移
バイオ系4社のキャッシュフロー推移

営業活動によるキャッシュフローはマイナス続きで、キャッシュは出ていくばかり。資金不足に陥らないためには財務活動による資金調達も欠かせません。

製造業や小売業でここまで大幅赤字が続くような会社だと、新たな資金調達もできず債務超過、倒産或いは身売りでもおかしくありません。最近の例ではヤマダ電機に買収された大塚家具。しかしバイオベンチャーの場合は、研究開発中の医薬品が日の目をみるまでは赤字が当たり前。投資家や提携先は、それを承知で資金を提供しており、資金調達が可能な限り研究開発は続きます。成功すれば莫大な収益が見込めるため、当面売上がたたなくても臨床試験や提携のニュース一つでストップ高になったりストップ安になったり。

実際バイオベンチャーのホームページを覗いて、最先端の医薬品の研究を読んだりすると夢を感じますし、人類の未来に役立つ研究に自分も投資していみたいと思ったりします。ただ、研究内容の実現性など素人には分かろうはずもなく、研究が頓挫すれば破綻もあり得るわけでリスクを取るにも難しいところがあります。財務諸表も独特で、一般的な財務指標はあまり役に立ちません。せいぜいお金が足りてるかどうかぐらいか。

今回はバイオベンチャー独特の財務諸表の例を紹介しました。昨日からストップ安のサンバイオは今後どうなるのか? ニュースでは、第日本住友製薬との提携が解消されても研究開発を続けるとのことで、新たな資金調達も適宜検討していくとありました。「脳損傷を対象にした再生細胞医薬品」との記載もあり、実現すれば世界の多く人々を救えるはず。この困難な局面を乗り切って、是非ともその再生薬を実現していただきたいものです。

なお、ご紹介したバイオベンチャー各社の財務諸表チャートは、ここをクリック(タップ)してご参照ください。各種財務分析も可能です。

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