【財務分析】アクルーアルって何? 黒字の裏にひそむもの。

たまに週刊東洋経済を買っているのですが、時折各種財務分析の結果をランキングで特集していたりして、今年も多数の記事を拝読させていただきました。XBRLチャートシステムの構築には、こうした記事はとても貴重で参考になります。年も押し詰まった12月14日号も様々な指標による企業危険度ランキングが掲載されているのですが、その中にアクルーアルなる洒落た響きの財務指標があったので、ここで取り上げてみます。

ネットで調べてみるとアクルーアルは英語で「accrual basis」、日本語訳は「会計発生高」とのことで、純利益から営業キャッシュフロー(以下営業CF)を引いたもののようです。「同数値がプラスの値で多額であればあるほど現金収入を伴わない、もしくは現金収入が遅れている」(同号62頁)とあります。ちなみに先日このブログでも紹介した会計利益先行率は、純利益を営業CFで割ったもので意味的には近いものがあります。ただ、会計利益先行率が比率なのに対して、アクルーアルは実額のため、その値自体でランキングするのは若干違和感もあるのですが、それはともかくとして、記事での抽出条件は5期累計の営業CFがマイナスの会社となっています。

記事では、アクルーアルが悪い上位各社にインタビューし、その回答も合わせて掲載されています。せっかくなので、首位の会社の返答内容を、このサイトで公開中のXBRLチャートシステムで確認してみます。

ワースト1位は日揮ホールディングス。原因はアルジェリアや豪州での資材や工事追加費用の立て替えとあります。ここではその事象がどのようにキャッシュフローに影響しているのか同社のCFチャートから順次追っていきたいと思います。以下は、日揮HDの直近4期のキャッシュフロー推移です。

日揮のキャッシュフロー推移

見たまま営業CFは大きくマイナスです。公開中のチャートシステムでは、営業CFの矩形をクリックするとその明細が表示されるようになっています。ご興味のある方は、こちらからチャートを開いてください。マイナスの原因を追うために営業CFを叩いて一段階明細に降りてみます。

日揮の営業キャッシュフロー推移

明細に降りると間接法で計算された営業CFの内訳が表示されます。1段目では、法人税、利息及び配当金の受取額が加減算されていますが、本丸はマイナス側に大きく張り出している小計の中にあります。小計の矩形をクリックしてもう一段降りてみます。

日揮の営業CFの小計推移

ここまで降りると明細科目が多過ぎてスクリーンショットでは何がどれやらわからないと思いますが、チャートシステムでは気になる科目にマウスを重ねたり、タップすれば各科目が何であるのか分かるようになっています。

2019年3月期でマイナス側に大きく影響を与えているのは、「売上債権の増加」と「未収入金の増加」です。日揮が東洋経済への回答で挙げた理由、「アルジェリア、豪州案件での立て替え」とは、この未収入金の事でしょう。立替金は売上債権には当たらないはずなので。

日揮によれば、この未収入金は既に回収しており、今期上半期時点での営業キャッシュフローは1,133億円のプラスに転じているとのことで、同社のIRでもその状況は確認できました。売上債権も大幅に減っているようなのでこちらも同案件だったのかも知れません。結果的には同社のアクルーアルの好ましくない状況は既に終わった話だったようです。

2位以下の会社も理由として挙げているのは、一時的な売上債権、棚卸資産の増加、立替金の発生といったところです。気になる方は、こちらに上位の会社のCFチャートを並べてみましたので分析してみてください。

このアクルーアルにしても会計利益先行率もそれだけで財務上の危険度を判定できるわけではありません。キャッシュフローの明細や、売上債権や棚卸資産の回転率等の指標の動きと合わせて評価する必要があります。そう考えると会計利益先行率やアクルーアルのような指標に、各種回転率などを組み合わせて企業の危険度をより的確に表せるような新たな指標も検討できるのではないかと言う気がしてきます。そんなことは財務分析の専門家がとっくに考えそうなことですし、既にあるかも知れませんが年末年始の暇つぶしに調査してみたいと思います。

今回はアクルーアルを取り上げてみました。この指標については公開中のシステムの分析チャートの一つとして加えることも検討したのですが、利益がキャッシュに裏付けられているかどうかは、先に追加した会計利益先行率だけでも良さそうな気もするので当面見送ることにしました。計算のベースとなる純利益と営業 CFは、会計利益先行率のチャートにもバーチャートとして表示していているので、アクルーアルは見た目で概算できるかと思います。作ること自体は簡単なので、ご要望があれば瞬間で追加できますが、やたらと分析ボタンが増えるのもどうかと考えています。ユーザ・インターフェイスも含めてそろそろ再検討が必要なのかも知れません。

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