【財務分析】XBRLから仕入債務回転日数を可視化してみる

財務分析では、運転資本の回転状況を見るための指標として棚卸資産回転日数、売上債権回転日数、仕入債務回転日数の三つがあります。このサイトで公開中のチャートシステムでは、前者二つはサポートしていましたが、仕入債務回転日数には対応していなかったので、今回追加することにしました。

ベースとなる仕入債務回転率は、仕入債務(買掛金)と売上原価を使って、仕入債務÷売上原価で計算されます。これに期間を掛けて日数ベースにしたものが仕入債務回転日数です。ただ、ネットでこの指標を調べてみると、売上原価ではなく売上で計算する場合もあるということなので、今回は両方をプロットすることにしました。ちなみに公開中の棚卸資産回転日数も同様に原価ベース、売上ベースで計算してプロットしています。

財務諸表ハックでは、チャートの作成にあたって計算された指標を単体でプロットするのではなく、計算の中に登場する勘定科目も合わせて可視化することを基本としています。そうすることで回転日数の変化が債務の変化によるものか、或いは原価によるものなのか視覚的にわかります。それとこの計算がXBRLのどの勘定科目によるものなのか明示して、問題があれば気づいてもらうこともできるかと。

実際に作ってみたものはこんな感じです。例として、牛丼の吉野家の仕入債務回転日数を描いています。

吉野家の仕入債務回転日数推移

分析チャートはクラス化しているので、プログラミング的にはサブクラスを作って勘定科目を調整する程度なのですが、時間がかかるのは色使い。何度も色を入れ替えして試行錯誤した挙句、出来上がりはこんな具合。自分にセンスがないのはわかっているので、一度専門家にサイトや各種チャートのトータルカラーコーディネートでもしてもらおうかと悩んでいます。

出来上がった吉野家の仕入債務回転日数は、ほぼ1ヶ月です。一般的な企業で1、2ヶ月というところなので、吉野家は標準的です。

私は前職は経理マンですが、一般に売掛金の回収は早目に、支払いは(適度に!)遅めというのが基本です。会社は中小企業でしたが、上場企業など大手との取引では、大体翌月には入金があったので30日前後というのは納得です(自社の支払いはそれよりちょっと遅めでしたが)。業界によっても偏りがあるようで、60日前後やそれ以上というところもあるようです。一方で、日本マクドナルドのようにで約1日と極端に短い日数で計算されるところもあります。

日本マクドナルドの仕入債務回転日数推移

こうなると買掛金の概念自体に違いがあるか?。高度に電子化されているとしてもちょっと…。事情を調べてみる価値はありそうです。

今回は、XBRLから仕入債務回転日数をチャートにしてみました。他の分析チャートにも言えることですが、XBRLからこの種のチャートを作るのには限界もあります。例えば、仕入債務回転日数の計算には売上原価を使います。この科目の取得には、勘定科目ツリーを探索して売上総利益から一段降りたCostOfSalesを拾っていますが、業界によっては売上総利益自体がなかったり。また、IFRS会計基準の会社によっては、仕入債務をその他の債務とゴッチャにした「営業債務及びその他の債務(TradeAndOtherPayablesIFRS)」で計上しているところもあり、これでは計算しようがありません。そういう場合はエラー表示にしています。金融庁のタクソノミを設計している先生方には、何のためのXBRLなのかもうちょっと考えてもらいたいものです。

ともあれ、これで運転資本に関する指標3兄弟が出揃いました。財務諸表ハックでは、比較・分析タブで個別にみることができるようになっているのですが、企業の個別タブでも、いくつかの分析チャート組み合わせて一覧するような画面もいいかなという気がしています。例えば、総資本回転率+運転資本回転率3種を一覧する画面とか。作ってみて面白そうならまた実装してご紹介したいと思います。

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