東証TDnetのXBRLを検証してみる

日本のXBRLリポジトリとしては金融庁のEDINETがあります。海外では、米証券取引委員会(SEC)のEDGAR、カナダ証券管理局(CSA)のSEDARがあります。このサイトで公開しているチャートシステムは、日本の上場企業をEDINETから、米国企業のサンプルをEDGARからXBRLを取得しデータベース化しています。XBRLの解析にはpythonベースのクラスライブラリを構築しており、金融庁/EDINET、米SEC/EDGARの実装レベルの違いを抽象化して吸収し、日米のXBRLを同様に扱うことができるようになっています(カナダSEDARにも取り組んでみたいのですが、ユーザーインターフェイスが悪過ぎてXBRLのチェック以前で放置状態)。EUでもXBRLは数十年前から議論はされているようですが船頭多くして…と言うところで何も実現されていないようです。

世界で3カ国しかまともなリポジトリがない中で、日本には金融庁以外に東証のTDnetでも上場企業のXBRLが公開されています。日本企業についてはEDINETがあるのでTDnetはこれまでチェックしていなかったのですが、TDnetのXBRLにはEDINETにはないメリットがあることに今更気づきました。それは公開時期の速さです。EDINETのXBRLは有価証券報告書として株主総会の承認を得てからの登録になるため決算期末から3ヶ月ほどかかります。上場企業の株主総会が期末から3ヶ月目の月末に集中しているためです。例えば3月決算企業のXBRL登録は6月末。企業の決算発表自体は期末から1ヶ月〜2ヶ月後には行われているので、それに合わせてここでもチャートを公開できるようにしたいのですが、実際にはそれから1ヶ月以上かかってしまいます。

ところが、TDnetは適時開示でXBRLを公開しているようです。決算発表とほぼ同時。決算情報はスピードが命。使えるものならこちらに乗り換えたいと思い、TDnetのXBRLを検証してみることにしました。

早速いくつかの会社のXBRLをTDnetからダウンロードしてみました。検索期間が過去1ヶ月で制限されているのが残念なところですが随時データを取得すればなんとかなります。問題は内容です。早々某社のXBRLをダウンロードしてみると、SummaryとAttachmentという2つのフォルダで構成されていました。まずはSummaryフォルダから。

  1. tse-acedjpsm-92010-20200430402530-def.xml
  2. tse-acedjpsm-92010-20200430402530.xsd
  3. tse-acedjpsm-92010-20200430402530-ixbrl.htm

1はXBRL/定義リンクベース(Definition LInkBase)、2がXBRLタクソノミスキーマ。3は生成された決算短信のhtmlで、これをブラウザで開けば、各企業が自社のWebでも公開している決算短信をみることができます。人が見るだけなら3のhtmlだけで十分。1と2はXBRLの部品見たいなものですが、これだけでは何もできません。次は、Attachmentフォルダ。

  1. index.txt
  2. manifest.xml
  3. tse-acedjpfr-92010-2020-03-31-01-2020-04-30.xsd
  4. tse-acedjpfr-92010-2020-03-31-01-2020-04-30-cal.xml
  5. tse-acedjpfr-92010-2020-03-31-01-2020-04-30-def.xml
  6. tse-acedjpfr-92010-2020-03-31-01-2020-04-30-lab-en.xml
  7. tse-acedjpfr-92010-2020-03-31-01-2020-04-30-lab.xml
  8. tse-acedjpfr-92010-2020-03-31-01-2020-04-30-pre.xml
  9. 0101010-acbs01-tse-acedjpfr-92010-2020-03-31-01-2020-04-30-ixbrl.htm
  10. 0102010-acpc01-tse-acedjpfr-92010-2020-03-31-01-2020-04-30-ixbrl.htm
  11. 0103010-acss01-tse-acedjpfr-92010-2020-03-31-01-2020-04-30-ixbrl.htm
  12. 0104010-accf01-tse-acedjpfr-92010-2020-03-31-01-2020-04-30-ixbrl.htm

1と2は目録みたいなもの。3はXBRLタクソノミスキーマ。4から8はXBRLリンクベース、それぞれ計算リンクベース(Calculation LInkBase)、定義リンクベース(Definition LinkBase)、ラベルリンクベース(Label LinkBase/英語)、ラベルリンクベース(Label LinkBase)、表示リンクベース(Presentation LinkBase)です。9から11はhtml、人が見るための書式で、ブラウザで開けばお馴染みの貸借対照表、損益計算書他と言った帳票が参照できます。XBRLの良いところは各種勘定科目など財務諸表の要素(例えば売上とか資産とか)の数値データと、その要素間の関係性を示すリンクベースを分離しているところ。9〜11のhtmlは、表示リンク(Presentation LinkBase)とXBRL文書実体(決算数値データ)及び科目のラベル(Label LinkBase)を連携させることで自動生成することができます。もちろんそう言うソフトを作るなり買うなりすればですが。

あれ? でもその肝心のXBRL文書実体は何処に? 少なくともフォルダを見る限りTDnetのXBRLパッケージにはXBRL文書実体(Document Instance)がありません。例えるならパンダの型枠はあるのに流し込むプリンがない、餃子の皮はあるのに具がない、ラーメンがあるのにご飯がない…、これはちょっと違う。HTMLを書ける人なら、CSSはあるのにHTML本体がないみたいな。テンプレートはあるのに適用するデータがない状態。文書実体がなければスキーマやリンクベースはお飾りでしかありません。誰がパンダの型枠だけ見てプリンを食べた気になれる? 東証がこのような形でXBRLを公開している意図がわかりません。文書実体がないのなら派生物としてのHTMLだけの公開で良さそうなものですが、何のためのXBRLなのかさっぱり。うっかり付け忘れたと言うことはないでしょうから東証の開示方針でしょうが、これではXBRLとして使いようがありません。企業の適時開示とほぼ同時に入手できるのにとても残念。

それでもなんとか悪あがきできないか調べみると、派生物であるHTMLの中にタグの属性として元の科目情報が隠れていました。例えば、貸借対照表のhtmlでは、現預金の金額部分は以下のような記述になっています。

<span style=”font-family: ‘MS Mincho’; font-size: 12px”><ix:nonfraction name=”jppfs_cor:CashAndDeposits” contextref=”Prior1YearInstant” unitref=”JPY” decimals=”-6″ scale=”6″ format=”ixt:numdotdecimal”>462,064</ix:nonfraction></span>

HTMLに埋め込まれた<ix:nonfrantion>タグには、勘定科目コード「jppfs_cor:CashAndDeposits」、コンテキスト名「Prior1YearInstant」他痕跡が残っているのでこれを頼りに、リバースエンジリアリングでXBRL文書実体を逆生成することも可能かも知れません。しかし東証もここまで公開しているのなら元の文書実体も合わせて公開しても良いのでは。なぜこんなことを?

財務諸表ハックでは、EDINETのXBRLをベースにチャートを公開していますが、決算情報は生(なま)物。企業が決算発表してから数ヶ月遅れ、翌四半期が終わる頃にようやく取得できるというのでは価値も半減してしまいます。他の記事でも度々触れているのでしつこいようですが、米EDGARは決算発表とほぼ同時です。しかも米企業は決算発表自体が日本企業より1ヶ月程早目。世界で3カ国しか運用できていないXBRLリポジトリなので贅沢も言えませんが、EDINETももう少しなんとか….。

東証TDnetのXBRLに文書実体が含まれていない件は、あくまで私が調査した上での見解で、実はありますと言う情報があればコメントにお願いします(その場合は訂正記事も書きたいと思います)。当面は、文書実体を逆生成するか、他の活用方法も検討してまたレポートしてみたいと思います。

東証TDnetのXBRLを検証してみる” に対して2件のコメントがあります。

  1. 名無し より:

    いつもXBRLに関連する記事を楽しく拝見しています。

    確かにTDnetでXBRLファイルは提供してないです。なぜでしょうね・・。
    その代わり、InlineXBRL(〜ixbrl.htm)で提供しています。ちなみにEDINETやEDGARもInlineXBRLは提供してますよ。以下のP51あたりから見ると、なんとなく理解できるかと思います。
    https://www.fsa.go.jp/search/20130821/2b_1.pdf

    リバースエンジニアリングは悪手と思います。よろしければ、以下OSSを利用してみてください。InlineXBRLからXBRLを作成するもので、XBRLInternationalのお墨付きです。
    https://sourceforge.net/projects/inlinexbrl/

    1. editor1 より:

      コメントありがとうございます。このブログのコメント第一号です。
      ご指摘ありがとうございました。ご紹介いただいたツールも含めて東証XBRLの焼き方を検討してみたいと思います。何かしら成果が出ましたらまたブログで記事にしたいと思います。

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