【財務分析】ジャパンディスプレイのビフォー・アフター

本来最も過ごしやすいはずの4月も、コロナ禍の閉塞感でその爽快感を実感できない巣篭もりの日々。悪いニュースばかり聞かされる中、M&Aが決まっていたジャパンディスプレイ(JDI)がコロナの影響で買収対価を引き下げられるというニュースが日経新聞で報じられていました。もうなんでもコロナのせい。そう言えばJDIは粉飾決算疑惑もあって、前年度の第3四半期(12月)決算の有価証券報告書の提出が遅れていました。今更気づいてチェックしたら1週間前の4月13日にEDINETに登録されていました。しかも過年度に渡る大量の訂正有価証券報告書と合わせて。昨年来のニュースによれば、在庫調整を使った古典的な手法が取られていたとか。せっかくなのでその手法のビフォー・アフターをチャートで比較してみます。と言ってもこの手の粉飾?でいじられた数字はチャートで判別できる程大きいかどうか微妙なのではっきり区別がつかないかも知れませんが、企画倒れ覚悟でやってみます。まずは貸借対照表から。

ジャパンディスプレイの貸借対照表推移(訂正前)
ジャパンディスプレイの貸借対照表推移(訂正前)
ジャパンディスプレイの貸借対照表推移(訂正後)
ジャパンディスプレイの貸借対照表推移(訂正後)

純資産比率のラインチャートの数字があるので区別はつきますが棒グラフでは微妙。前年度時点の純資産比率は訂正前で1.29%とチャートでも薄皮一枚棒グラフでも確認できますが、訂正後の0.16%ではほぼ消滅しています。次は損益計算書。どの段階の損益で比較するのが良いか迷うところですが、在庫を利用した利益操作なら粗利(売上総利益)が適当かと思われます。なお、このチャートシステムでは、粗利、営業損益から税引後の最終損益まで全てチャート化できますので興味のある方はお試しください(記事の最後にリンクを貼っておきます)。

ジャパンディスプレイの売上総利益推移(訂正前)
ジャパンディスプレイの売上総利益推移(訂正前)
ジャパンディスプレイの売上総利益推移(訂正後)
ジャパンディスプレイの売上総利益推移(訂正後)

調整が行われたのは2015年から2016年辺り。訂正前と訂正後で利益率が0.6〜0.7%動いています。この利益調整の後遺症のためか、2018年以降は実態より悪くなっています。結果訂正後は2018年3月期、2019年3月期は上方修正となる顛末。結局つけを後に回しただけということか。ちなみに事が行われた頃の会長は元三洋電機副社長なのだそうです(Business Journalより)。次はキャッシュ・フロー計算書。

ジャパンディスプレイ キャッシュ・フロー計算書推移(訂正前)
ジャパンディスプレイのキャッシュ・フロー計算書推移(訂正前)
ジャパンディスプレイ キャッシュ・フロー計算書推移(訂正後)
ジャパンディスプレイのキャッシュ・フロー計算書推移(訂正後)

CFチャートに関しては全く区別がつきません。もちろん数字は訂正されていますが、チャートで判別できる程の違いはありません。粉飾決算をテーマにした本は多数出ていて、目についたものは大体読んでいるのですが、定番の判別方法は、損益とキャッシュ・フローの動きのずれ。でもこのチャートでそれを検知するのは厳しそうです。財務諸表ハックでは、関連して会計利益先行率チャートも公開して営業キャッシュ・フローと損益の対比を可視化していますが、そのチャートでもちょっと厳しそうです。次は、調整(いや操作?)されたという在庫に関するチャート、棚卸資産回転日数です。このチャートでは、棚卸資産と原価を並べて可視化しているので、今回のような件ではうってつけのはず。

ジャパンディスプレイの棚卸資産回転日数推移(訂正前)
ジャパンディスプレイの棚卸資産回転日数推移(訂正前)
ジャパンディスプレイの棚卸資産回転日数推移(訂正後)

訂正後は2017年3月期まで棚卸資産が下方修正、2018年3月期以降は上方修正となっています。その修正分で訂正前、訂正後の棚卸資産回転日数が変化しています。実はこの棚卸資産の調整によって売上原価が都合よく動いているのですが、その変化はチャート上で判別できる程大きくありません。その動きによって先の損益計算書(売上総利益段階)の損益の変動に繋がっています。まぁこのレベルのチャートで目に見えるほど調整?してたら流石に決算時点で会計監査人に指摘されるでしょう。そこは微妙にいじるのがコツ。ちなみに棚卸資産の操作でなぜ原価が変化するのかは、ググって頂ければ多数の専門家が解説されているのでそちらに譲ります。

以上、ジャパンディスプレイの訂正前、訂正後の比較を行なってみました。いかがだったでしょうか。今一つ違いはわからなかったかと思いますが、これを機に損益や在庫とキャッシュなど関係性をもっと細かいレベルで可視化して、その異変を検知できるチャートを研究してみたいと思います。

ちなみに先のチャート以降(2019年3月以降)JDIは債務超過に陥りました。訂正後のBSの4半期決算推移は以下の通りです。

12月期には-25%超の債務超過でしたが、M&Aと金融支援もあって3月には水面上に脱したようです。その様子がチャートで公開できるのは株主総会後の6月末になります。コロナ下で総会が開ければですが。ともかくJDIについてはM&Aの決着も付き、過年度修正有価証券報告書も提出されてとりあえず一区切りついた感じです。日の丸ディスプレイは今後も苦難が続きそうですが、シャープも含めかつての輝かしい時代を取り戻して欲しいものです。

なお、ネットで公開しているチャートのデータベースは訂正後のデータに更新していて訂正前のデータは参照できませんが、JDIの財務分析チャートのリンクを貼っておきます。PC版の方はシャープとの2社比較にしてみました。

 PC版Web: https://www.tukuttemiru.biz/zhack/?seccode=E30481+E01773&ana=ana-bs

 スマホ用Webアプリ: https://www.tukuttemiru.biz/mzhack/?code=E30481

このリンクで公開しているチャートは、画像ではなくSVGで作られたインタラクティブチャートです。チャート上の資産等をクリック(タップ)する事で例えば流動資産以下の商品在庫等をチャートを表示したり、営業キャッシュ・フローの内訳(例えば棚卸資産の増減)など、簡単に勘定科目の下位構造を表示できるようになっています。チャートの使い方は、こちらを参照ください

追伸:記事を書き終わって気がついたのですが、考えてみれば一連の操作はJDI本体で行われているので、単独決算で見た方がより顕著に判ったかと思います。PC版では単独決算も公開していますので「非連結」モードで参照ください。ただし、非連結決算のXBRLでは、キャッシュ・フロー計算書(CF)が含まれないのでCFは表示できません。

【財務分析】ジャパンディスプレイのビフォー・アフター” に対して3件のコメントがあります。

  1. 遠藤元一 より:

    初めまして。JDIの資料をみている中で、こちらのサイトにたどり着きました。少人数でJDIの粉飾決算の勉強会を行うことを考えており、そのとき、図表を引用させていただきたく、ご連絡させていただきました。認めていただける場合は、引用元としてどのような表記にすればよいかという点もご教示いただけませんでしょうか。よろしくお願いします。

    1. editor1 より:

      コメントありがとうございます。勉強会で使っていただけるとのこと、光栄ですし励みになります。少人数の勉強会での資料としてご利用いただけるのでしたら特にこちらから制限などお願いすることはございません。このサイトのチャートが少しでもお役に立てるようでしたら幸いです。よろしくお願いいたいます。

  2. 遠藤元一 より:

    ご返信ありがとうございました(気が付くのが遅くなってしまい申し訳ありません)。7名の勉強会の資料として使用させていただきますが、「財務諸表ハック2020・4・22」から引用という形で記載させていただきます。JDIの第三者委員会は格付け委員会でも取り上げられており、個別格付けはすでに公表されています。私も格付委員会の格付けの公表前に取材を受けましたが、取材をもとにした記事がクレジットで本日(5・22)の日経デジタル電子版のリーガルのつぼに掲載されております。ご参考まで。

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