葬儀屋さんの財務諸表【財務諸表の散歩道】

「財務諸表ハック」では企業の検索方法として、文字や証券コードによる通常の検索に加えて「ランダム」抽出ボタンを置いています。

思いつきで加えたものですが、退屈で手持ち無沙汰の時にクリックして目的もなく財務諸表を眺めてみるものありかなと。世の中には四季報を全ページ読破して投資対象を物色する強者も多数いらっしゃるようなのですが、こちらは偶然の出会いを求めて目をつぶって四季報を開くようなもの。本日偶然出会った会社は「燦ホールディングス」、聞いたことのない会社ですが、今回はこの企業の財務諸表を散策してみたいと思います。まずは財務的な概況を掴むためBS/PL対比チャートから。

燦ホールディングスのBS・PL対比チャート(2020年3月期)

財務データがどうのと言う以前に社名の漢字が読めません。Googleで引いたら「燦」は「さん」と読み、きらびやかで美しいことをさすとか。「日がさんさんと輝く」の「さん」はこれです。この時点で勉強になりました。

漢字はともかく財務諸表はとても好い感じ…。純資産比率は高くほぼ無借金、PLでもしっかり利益も出ている様子。固定資産部分だけでPLを上回っており固定資産で稼ぐ事業っぽい?早速燦ホールディングスのホームページを覗いてみると事業内容はライフエンディング事業、主には葬儀屋さんです。グループの中核企業は公益社、この社名の方がポピュラーかも。ではこの会社の事業のエンジンたる有形固定資産の構成をチャートにしてみます(財務諸表ハックでは、チャートの固定資産部分をクリックすると下位勘定科目のチャートが表示されます)。

燦ホールディングスの有形固定資産の構成チャート 2020年3月期

構成の主要なところは土地と建物。主に自社所有する葬祭場かと思われます。葬儀関連の事業だけに変動の少ない安定した業績が予想されますがPLでその動向を見てみます。なお、財務諸表ハックでは、売上総利益、営業損益から最終損益まで全段階のPLを表示できますので、ご興味のある方はこちらで参照ください。以下に添付したのは経常損益段階のPLです。

燦ホールディングスの経常損益推移 2020年3月期

年率数パーセントで安定成長しています。ちょっと不謹慎ですが日本の死者数の統計をググってみると、高齢化が進む中で死者数も同程度は増えているのでこれぐらいの成長は…。利益もしっかり出ていて利益率も毎年改善しているようですが、この数字は昨年3月まで本決算の数字。ここ一年のコロナ禍の中ではどうだったのか。緊急事態宣言下でも葬儀の数が減るとは思えませんが、個々の規模が縮小している事も予想されます。実際、先日私の縁戚の葬儀も家族葬に近いものでした。昨年3月以降の四半期ベースのPLを時系列チャートで見てみます。

燦ホールディングスの経常損益四半期推移 2020年12月期

このチャートは、各四半期単体の経常損益を表示していますが、右下のチェックボタンのチェックを外せば四半期累積で表示することもできます。第一波の緊急事態宣下では昨年同期比で20%近くは落ちていますがその後は回復基調が続いています。年明けからの緊急事態宣言の影響は本決算までわかりませんが、この一年を見ても飲食系の悲惨な状況に比べれば影響も限定的のようです。次は基本3諸表の残り、キャッシュ・フロー計算書です。

燦ホールディングスの経常損益推移 2020年3月期

営業CFで十分に投資CFを賄っています。財務CFのマイナスは負債の返済ですが、2020年3月時点で借入金はもうほとんどありません、ほぼ無借金。年間の純利益に対して営業キャッシュフローが多少大きめなのは建物等の固定資産が大きく減価償却費分が加算されるため。減価償却費は会計上の費用でキャッシュアウトを伴いません。減価償却費がどの程度あるかは、財務諸表ハックではチャート上の棒グラフを直接クリックして下位の勘定科目を辿れます。減価償却費へは、上記チャートの水色の営業キャッシュフロー→小計→減価償却費の順にクリックすると以下のチャートが表示されます。興味のある方は、このリンクのチャート画面から試して見てください

燦ホールディングスの減価償却費推移 2020年3月期

営業キャッシュ・フローと損益の関係は、以下の会計利益先行率チャートでも確認できます。

燦ホールディングスの会計利益先行率 2020年3月期

会計利益先行率については、以前記事にまとめたものがありますのでこちらを参照ください。PLで計算される損益にはキャッシュの出入りを伴わないものもありますが、このチャートで営業キャッシュフローと損益の関係性を見ることができます。この指標は当期純利益比で50%前後が標準とされていますが、燦ホールディングスは至って普通です。

偶然出会った燦ホールディングス社について、BS/PLからCFまで巡ってきましたが、葬儀屋さんはやっぱり安定しているようです。ちなみにこの会社を葬儀屋さんと一言で括ってしまいましたが、正式にはライフエンディング事業。ホームページを見ると、いわゆる終活に関連する様々なサービスを提供しています。巷では団塊世代が後期高齢者となる2025年問題がささやかれていますが、この業種にはむしろ追い風のはず。今後も安定した業績が続くのではないかと想像します。

まぁなんだかんだ自分もいずれ何らかの形でお世話になるんだろうな、と思いつつ本日の散歩はここまで。

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