マネーフォワード vs. フリー【財務諸表の散歩道】

このブログに記事を書くのも暫くぶりなのでリハビリも兼ねて「財務諸表の散歩道」という新カテゴリーで気になる会社の財務諸表を気軽に巡ってみる程度の記事を始めて見たいと思います。

初回はマネーフォワードとフリー。両社ともクラウド会計ソフトを展開している新興企業です。会計ソフトは老舗の大企業も多数ありますが、個人から中小規模企業をターゲットにクラウドでサービスを提供する新興勢力がシェアを伸ばしています。中でも勢いがあるのがマネーフォワードとフリー。元経理マンの私としては各社の会計ソフト自体にも興味がありますが、両社の成長の様子を財務諸表チャートから覗いてみたいと思います。

まずは両社のBSとPLを並べたBS/PL対比チャートから。BSとPLを対比することでその企業の財務的な概形がわかります。
念のため、マネーフォワードは2017年9月、フリーは2019年12月上場の上場です。チャートデータは、各社がEDINET@金融庁に提出しているXBRLから展開したもので上場来のものです。
株式会社マネーフォワードのBS/PL対比チャート 2020年11月期
株式会社フリーのBS/PL対比チャート 2020年6月期

決算月はマネーフォワードが11月、フリーは6月です。同業の財務諸表はそれなりに似ているものですが、この2社も全体の雰囲気はそっくり。ただ大きな固定資産のいらないネット企業の場合、BSよりPLが大きく総資産回転率が高い形が典型ですが、この2社は増資もあってたっぷり流動資産を抱えているのでBSの方が背が高くなっています。PLでは売上より費用が大幅に上回って両者とも大赤字(黄色の部分が純損益、マイナス側に表示される場合は赤字です)。PLの時系列推移も並べてみます。

株式会社マネーフォワードのPL(営業損益)推移チャート 2020年11月期
株式会社フリーのPL(営業損益)推移チャート 2020年6月期

掲載のチャートは営業損益段階のPLです。財務諸表ハックでは売上総利益から最終損益までの各損益の推移を表示することができますので、興味のある方はこちらで参照してください。両社ともすごい勢いで売上を大きく伸ばしているのがわかります。一方で損益はずっと赤字。減価率が低い割に販管費が大きく、現状は身を削ってでもシェアを伸ばす段階の様子。こうなると体力勝負、両社の資産状況をBSの時系列推移チャートで見てみます。

株式会社マネーフォワードのBS推移チャート 2020年11月期
株式会社フリーのBS推移チャート 2020年6月期

赤字続きの会社の純資産は細っていくのが通常ですが、両社とも損失以上の増資でカバーしています。流動比率(流動負債/流動資産)では、上場後間もないフリーの方がたっぷり余裕がありそうですが、マネーフォワードも十分です。両社の流動比率チャートはこちらで参照できます。流動比率をご存知ない方は、動画も作っているのでこちらをどう

実際の増資の様子はキャッシュフローの推移でも確認できます。

株式会社マネーフォワードのキャッシュフロー推移チャート 2020年11月期
株式会社フリーのキャッシュフロー推移チャート 2020年6月期

激しい競争を勝ち抜くためには継続的に開発投資も必要ですが、赤字続きで営業キャッシュフローはずっとマイナス。必要な資金は財務活動で調達するしかありません。財務活動による資金調達は、借金か増資が主なものになりますが、具体的な調達手段は財務キャッシュフローチャートでその内容を確認できます。

株式会社マネーフォワードの財務キャッシュフロー推移チャート 2020年11月期
株式会社フリーの財務キャッシュフロー推移チャート 2020年6月期

チャート内の「株式の発行による収入」という項目が増資による資金調達を表ています。この記事に掲載したチャートはスクリーンショットですが、「財務諸表ハック」本体で表示しているチャートは図形(ベクターグラフィックス)で作られています。各図形オブジェクトは自分がどの勘定科目に該当し、自分の下位構造がどんな勘定科目で構成されているか知っているのでクリック(タップ)すれば、その詳細チャートを表示してくれます。勘定科目の下位構造チャートは、各社のXBRLで定義されている各科目の最下層まで追跡できます。例えば、「財務活動によるキャッシュ・フロー」のチャートで、「株式の発行による収入」をクリック(タップ)すると以下のチャートが表示されます。

株式会社マネーフォワードの財務キャッシュフロー・株式の発行による収入推移チャート 2020年11月期
株式会社フリーの財務キャッシュフロー・株式の発行による収入推移チャート 2020年6月期

両社とも断続的に増資を重ねて事業を拡大しています。連続赤字の会社でも増資が可能なのはその将来性を有望視されているから。同様のパターンは以前紹介したバイオベンチャーの記事でも取り上げましたが、バイオの場合は医薬品開発が終わるまではほぼ売上もなく赤字だけが積み上がる状態で一か八か的な感じもありますが、クラウド会計の両社は急速に売上を伸ばしておりその将来性を買ってみたくなるのもわかります。

ちなみに両社をクラウド会計という言葉で簡単に括ったのですが、実際には会計をベースにマーケティング、ERP、CRMなどのサービスを展開しています。両社の決算説明会資料を読んでみると、その市場規模は数兆円とも。まだまだ先がありそうです。一方で同種のサービスをググってみると大手を含めて多数の企業が参入しているのがわかります。競争もまた激しそう。先行する両社はこのままシェア争いに勝ち残り、黒字化してさらに高みに登れるのか、これからも目が離せません。

余談になりますがフリーの上場時には私もIPOに応募しました。しかし人気のIPOに当たるはずもなく敢えなく落選。仕方なく上場後に単位株だけ買ったのですが、短い期間で倍になり狂喜乱舞して売ってしまいました。フリー株はその後も高騰、今や単位株買うにも100万円以上必要になってしまいました(2021年3月12日現在)。あのまま持っていれば…残念です。かといって今から買い直すのも間が抜けた感じだし。

このブログで取り上げた、マネーフォワードとフリーの財務チャートはこのリンクから参照できます。ご興味のある方はお気軽に参照ください。

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