【決算比較】丸善と文教堂

1月決算の会社の財務諸表XBRLがそろそろ出揃ったようなので、気になった会社の財務諸表を可視化していきたいと思います。1月決算の会社はあまりなく50社程度しかありません。今日はその中から丸善を取り上げてみます。丸善と言えば大型の本屋さんとして有名です。出版不況が続く中で、昨年は文教堂が債務超過になったこともあり、丸善の動向も気になっていました。丸善は、個人的にも東京駅前のオアゾや日本橋店をよく利用しています。

今回は比較対象として文教堂と並べて可視化してみることにしました。文教堂は8月決算のため昨年8月の財務諸表のデータを使っていますのでご注意ください。また、2社の正式名称はそれぞれ、丸善CHIホールディングス、文教堂グループホールディングスです。

まずは、2社のBS, PLの対比チャートから。

丸善、文教堂のBS、PL対比チャート

可視化に当たっては、2社の規模に金額で5倍以上の差があるので比例縮尺にはしていません。文教堂には純資産が表示されていないように見えますが、債務超過で0以下に線ほどのマイナスの純資産があります。損益計算書では「営業利益又は営業損失」が、借方(左側)にある場合は営業利益を、貸方(右側)にある場合は営業損失を表します。従って丸善は営業黒字、文教堂は営業赤字です。債務超過で危機的状況にある文教堂と、営業黒字を続けている丸善では状況がまるで違いますが、こうして並べて見るとBS、PLの比率(総資産倍率)や資産、費用の構成などとてもよく似ています。丸善は、書店以外の事業もあるのでもっと違いが出るかと思っていましたが意外です。次は、各段階利益推移です。

丸善、文教堂の各段階利益推移

丸善の売上は横這いながら営業利益率が改善している様子がわかります。苦境に陥っている文教堂ですが、粗利率(売上総利益率)段階では丸善を上回っています。とは言え毎年売上を落としていて、営業赤字も2%まで拡大しています。丸善は、書店としては丸善とジュンク堂を展開していますが、直近の決算短信を読むと書店事業単体では売上を落としており、経費削減で黒字を維持しているようです。書店業界全般に縮小均衡のようです。次は流動比率です。

丸善、文教堂の流動比率推移

丸善の流動比率は1.44倍ですが、現預金、売掛金までの当座比率でみると0.58倍です。日銭も入ってくる業態なので一倍以下でも一概に低いとは言えませんが、かと言って高いとも言えず。文教堂は以前も取り上げましが、かなり厳しい状況なのは見たままです。次は、棚卸資産の回転日数です。

丸善、文教堂の棚卸資産回転日数推移

丸善は、回転速度が少しずつでも上がっています。同じ書店業界と言っても展開している事業が全く同じというわけでもないので、この2社の回転日数を単純に比較して良いものかわかりませんが、それにしても回転日数が倍ほど違います。

2社の話とは直接関係ありませんが、昨年まで私が経理部員として務めていた会社にも出版部門があって、出版を担当していた時期には日々取次各社との納返品データを処理しなければならず、システム化されていたとは言え面倒な作業でした。売上が上がっても一方で返品による売上の戻しもありますし、委託販売とか、期末の断裁など出版の会計では色々勉強させていただきました。

今回は、書店を展開する2社を取り上げました。個人的にも書店はよく利用していますし、人と比べてもそれなりに本を買っている方だと思います。自分の住む街から本屋さんがなくなるなんて考えたくもありませんし、この業界には是非とも頑張っていただきたいものです。業界の動向は今後も追ってみたいところですし、機会があれば本を発行する側の出版社の財務諸表についても扱ってみたいと思います。

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